Balletweek Magazine

~公演記念記者発表会~

 

NEW 2025.7.8 更新

新国立劇場バレエ団

初の海外公演への挑戦

「ジゼル」@ロンドン ロイヤルオペラハウス

~吉田 都が「夢として」思い描いたロンドン公演がついに現実へ~

2025.7.24~27


  

~新国立劇場バレエ団 記者発表~

初の海外公演への挑戦

『ジゼル』@ロンドン ロイヤルオペラハウス

 

2025.7.24~27

 

 

 7月24日~27日、新国立劇場バレエ団は初の海外公演を英国ロンドンにある世界に名を馳せる名門歌劇場ロイヤルオペラハウスにて行う。その公演に先立ち、7月3日に新国立劇場内にて記者発表が行われた。今回のロンドン公演は、日本唯一の国立バレエ団にとって初の海外お披露目ということもあり、様々な意味を持っているーーと語るのは、最初に登壇した新国立劇場の藤野公之理事。日々研鑽を告げている当バレエ団ダンサーにとって、英国・世界に向けて踊りを披露する絶好の機会であり、またその経験はダンサー、ひいてはバレエ団全体の一段の成長に繋がる。そしてまだ歴史の短い日本の新国立劇場バレエ団の名を世界に広める絶好の機会であり、日本のバレエ界の水準を対外的にアピールできるチャンスと考えている、と今後のグローバル展開の意思を含めて強く語った。

その後、今回のロンドン公演のオフィシャルスポンサーである株式会社木下グループ代表取締役社長兼グループCEOの木下直哉をはじめ、元英国ロイヤルバレエ団プリンシパルであった新国立劇場舞踊芸術監督を務める吉田都、ロンドン公演のファーストキャストであるプリンシパルの米沢唯と井澤駿が登壇した。

 

  ◆◆◆ 初のロンドン公演について ◆◆◆

 

木下は吉田より自身の舞台への熱い思いとともに紹介を受けながら、「都さんがロンドンで公演するのは絶対に必要なこと、しかし新国立劇場バレエ団は残念なことに世界からはまだよく知られていない。今回の公演は日本のバレエ界にとっても世界からみた日本のバレエ団を示せる良い機会」と話し、海外公演の必要性とそれをサポートできることへの喜びを語った。

 

 吉田は、「今回のロンドン公演は『夢として』はぼんやり思い描いていた。監督になった当初はダンサーたちの立場で、ダンサーたちがロイヤル・オペラ・ハウスの舞台に立てたらどんなことが起きるんだろう、それがどのようにその後生かされるんだろうとぼんやりとした夢を持っていた。実際に監督としてスタートしたら欲が出てきて(笑)、みんなで作り上げる舞台は私が見ても世界レベルだと思っている、世界中のみなさんに見て頂きたい。歴史の浅いなかなか知られていないバレエ団だけど、今回を機にいろいろと海外公演に続けていけたらいいな。」と古巣ロンドン公演に向けての意気込みを真剣に語った。

また、「ダンサーのその後の成長も楽しみだが、劇場としても今回とても勉強になった。広報活動は現地にお願いしているが、それ以外のことは新国立劇場が自分たちですべて一からやっている。そのノウハウが劇場の財産ともなっていく。今回本当にスタッフの皆様は大変だったと思うが、次にまた繋がっていくと思う。」と今回のロンドン公演の意義を示した。

 

 

 ◆◆◆ 吉田舞踊芸術監督の創る『ジゼル』とは ◆◆◆

 

22年間英国のバレエ団で活躍した吉田。その後帰国し芸術監督になり、初めて手掛けた思い入れの深い作品が2022年の『ジゼル』だ。そして今年4月に新国立劇場にて再演。吉田はこの2回のジゼルの変化、そして日本人の演じる『ジゼル』について次のように述べた。

 

「初演の時は一から作り上げることにエネルギーが必要だったが、今回再演で振り付けも身体に入っているので、より『演じる』という部分を掘り下げられた。幕が開いた時に舞台美術や衣装、照明も入り、本当に総合芸術としてすごく良い作品が出来上がったな!と時間が経ったことで感じられた。私がイギリスでずっと学んできた演劇性の高いブリティッシュスタイルを継ぎながらも、新国立劇場バレエ団に合う作品に仕上がったとつくづく感じている。」と、作品に対する思いを説明した。

 

「ジゼルは繊細な表現が多いところが日本人にとても合うと思っている。また、イギリスの振付家アラスター・マリオットさんがこのバレエ団に合わせて振付してくれたコール・ド・バレエもかなりチャレンジングなフォーメーションであり、日本のコール・ド・バレエのレベルと質の高さを魅せることが十分にできると思う。

 

そのコール・ド・バレエで特に気にしたところは、ただ、きれいに揃えることは機械的な表現に過ぎなくなる、それでけではなく一人一人から自分のストーリーを伝えなくてはならないというところ。再演に関しては、それぞれの役柄を上手く演じているので、1幕の村人や貴族、そして2幕の死後の世界という場面もとてもコントラストが見える作品に仕上がっていると思う。

 

これが日本と英国の架け橋になるような作品になってくれたら!」と芸術監督としての日本ならではの『ジゼル』への思いを口にした。


 

 ◆◆◆ ジゼル役 米沢唯 と、アルブレヒト役 井澤駿の現在のお気持ちは・・・ ◆◆◆

 

ジゼル役の米沢唯は初日と3日目に主役を勤める。

米沢は「実感が全くないというのが正直な気持ち。イギリスに行くのは今回が初めてで、劇場があるコヴェント・ガーデンは私の中では幼い頃に見た映画『マイ・フェア・レディ』の世界だったり、ロイヤルオペラハウスも本当に小さい頃から見てきたバレエのビデオの中の場所というようにしか思えないような場所。おとぎの国の場所みたいな…あと数週間で私がそこで踊るのは本当に夢のよう。スーツケースを買って、準備はしてるけど本当に行くのかな?というように毎日思っているが、皆様の前に立って芸術監督の都さんや木下さんのお話を聞いてるといよいよいくんだなと…ちょっとドキドキしてきた!」と笑顔で今の気持ちを教えてくれた。

一番楽しみなのは、「その場所に行ってまずは舞台に立ってみたい、ということ」とにこやかに語った。

 

米沢は体調不良にて昨年舞台を離れていたが、この4月の『ジゼル』で復帰。その時の気持ちを伺うと、「一時期は全幕ものを踊るのは、もう無理かもしれないと覚悟した。でも1年経ってみると、こうして私の大好きな『ジゼル』で全幕復帰をし、ロンドンの舞台でも踊ることができる。本当に夢のよう・・・。こんなにうれしいことはあるのだろうかというくらい、うれしい。感謝を胸に精一杯の踊りができたら」と喜びいっぱいに語った。

 

復帰を果たした4月の「ジゼル」では、「呼吸の仕方から睡眠のとり方など、身体との向き合い方をはじめ、踊り、舞台との向き合い方、精神の持って行き方を一から見直した。『これだけやっても何かあったらそれはしょうがない』と腹をくくって舞台に出た。でも出る前に吉田監督の顔を見たら涙が出てきて、2人でちょっと泣いてしまって。それくらい、私にとって新国立劇場の舞台がすごく大切で、かけがえのないものだと感じた日だった」と振り返った。

 

演技面での変化では、「これまでは私にとって、ジゼルはどのような少女なのかがつかみづらい役で、“元気すぎる”だの“か弱すぎる”だの言われて難しかったが、今回は“踊りたくてしょうがない少女”というのが自分とリンクし、そこを手掛かりにスッと役に入ることができた」と語った。

 

最後に、ロンドン舞台に向けては「吉田都という素晴らしいダンサーを愛したイギリスの人たちの前で踊り、その人たちが新国立劇場バレエ団というバレエ団も愛してくれたらいいなと思い、できる限りのことをしたいと思う」と意気込みを話した。

 

アルブレヒト役の井澤駿も「本当に僕も楽しみで仕方がないというのが一番。まずこの機会を作っていただいた吉田監督、そして多大なるご支援をしてくださった木下代表スポンサーの皆様本当に感謝している。ロイヤルオペラハウスは、夢のようなことなのでプレッシャーもたくさんあるが、自分なりに作品とアルブレヒト役を表現していけたら。」と感謝と意気込みを伝えた。

 

海外で全幕ものを踊るのは初めてなので、海外でのお客さんの反応はどのような感じか?表現の仕方も変えた方がいいのかな?など考えながら今リハーサルに取り組んでいるという。

また今シーズン、海外バレエ団プリンシパルの佐々晴香や高田茜をゲストに迎えた公演で相手役を多く務めた井澤は、それらの経験について、「勉強になることばかり。毎回、表現に驚かされることばかりだった。直近高田と共演した『不思議の国のアリス』では、『もっとアリスに楽しんで踊てほしい』という感情が自分の中から芽生え、相手からの感情を受け止めて、また自分も出していくうちに、相乗効果とはこういうことなのかと感じられた。(高田が)出してくる表現も公演の度に異なり、すごいなあと勉強になった。自分の課題もたくさん見えてきたので、今後に生かしたい。」と語った。

 

米沢との初日については、「作品もパートナーも違うので、二人で作り上げていくものなので、残りの数週間ロンドン公演に向けてさらによいものになるよう築き上げていきたい。」と夢の舞台に向けての思いを語った。 

 

 

 渡英を目前に、団内の雰囲気についての質問では、米沢が「女性陣は『梅干し、持っていく?味噌ももっていく?』などと持ち物の話をしたり、みんな日本のお風呂がないことが心配で『バスタブが欲しい』という話を何度もしたりしている」と普段の会話を明かした。井澤も「男性ダンサーも銭湯好きが多いので、『サウナとかあるかな?』と話している」と同意し、会場に笑いを誘った。

リハーサルでは直前なので熱が入っていて、熱いリハーサルをしているとのことだ。

 

最後に吉田は、ダンサーたちに向けて「とにかく楽しんでもらいたい。やはり環境が変わると違う力が加わることもあると思うが、みんな4月にやったものをそのままやればいい。自分たちがやってきたことをしっかりと出し、イギリスのお客様に伝えることを楽しんでもえらえたら」と願いを伝えた。

 

また、吉田は今回のロンドン公演のためのPRで渡英した際にはたくさんの記者と話す機会があったとのこと。吉田は「イギリスのみなさんが思ったより温かく迎えてくれ、応援し、楽しみにしているというような反応でとても嬉しかった。私たちの目標は私たちが真摯に舞台に向き合って、それをイギリスでお伝えすることである。」と締めくくった。

 

 

 

記者発表では、『ジゼル』ロンドン公演の様子を現地で収録し、日本で放映する計画を進めているとのお知らせがあった。日本でもロンドン公演の様子を見られることに期待したい!

 

 

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Royal Opera Houseでの公演情報についてはこちら☞

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◆◆◆公演情報◆◆◆

新国立劇場から世界へ!吉田都芸術監督が手がける圧巻の舞台

新国立劇場バレエ団

『ジゼル』ロンドン公演

 

 

日程 2025年7月24日(木)19:30

            2025年7月25日(金)19:30

            2025年7月26日(土)14:00

            2025年7月26日(土)19:30

 

            2025年7月27日(日)14:00

 

会場 英国 ロイヤルオペラハウス

 

2022 年に吉田都芸術監督が初めて演出を手掛け、話題を呼んだ『ジゼル』。イギリスの振付家アラスター・マリオットとともに、19 世紀ロマンティック・バレエ不朽の名作を新しく生まれ変わらせ、ロマンティック・バレエの本質である幽玄さを持ちつつも演劇的なドラマとして再構築したと評価されました。

吉田監督がこの作品を演出するにあたって目指したのは、演劇的に深みのある舞台。それぞれのキャラクターの人物像から物語のバックグラウンド、そして役柄の一人ひとりにどういった感情の動きがあるのかなど、クリアに伝えられながら制作されました。ブリティッシュ・バレエの伝統を受け継ぎつつも、新国立劇場バレエ団らしいオリジナルのジゼルにぜひご注目ください。

 

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