バレエ公演レポート

NEW 2025.8.8 更新

~感動の舞台~

バレエ公演REPORT


 

バレエアンサンブルガラコンサート

2025~東京~

2025.8.8(金)

きゅりあん 大ホール

 

 

  2022年夏に大阪でスタートしてから毎年恒例となっているマーティ株式会社主催の「バレエアンサンブルガラコンサート」が、今年初めて東京でも開催されました。「アンサンブル」とはフランス語で「共に、統一、調和」を意味する言葉。このアンサンブルガラコンサートは、プロアマ問わず様々なダンサーに多くの思いを込めてマーティ株式会社が主催しているものです。代表取締役の松崎社長は、「海外でプロとして活躍している日本人バレエダンサーは年々増えています。そのダンサーたちの踊りを日本でも披露する機会を作り、日本の皆様にご覧いただきもっと彼らを知ってもらいたい。そして日本でバレエの練習に励んでいるアマチュアダンサー、未来のバレエダンサーと一緒に一つの舞台を作ることで、世代や経験を超えて刺激を与えあい、共演を通してより視野を広げ、技術面、精神面ともに成長する機会として欲しい。」と自身の思いを語ってくれました。

 

マーティ株式会社は全国に約●●箇所のバレエスタジオを運営、毎年数多くのコンクールやガラコンサートの舞台イベントも開催し、バレエ教育、そしてバレエ文化を日本に広める活動に取り組んでいます。今後も引き続きアンサンブルガラコンサートへの期待を膨らませていました。

 

今回の東京公演では、第1部はバレエガラコンサート/国外で活躍するダンサーによる饗宴の10作品、第2部は『シンデレラ』より抜粋という構成でした。

 

 第1部のバレエガラコンサートではバレエの古典作品を代表するような『ドン・キホーテ』や『ジゼル』『ライモンダ』などから

 

 

はもちろん、個性豊かな創作作品まで、ダンサーが「今見てほしい!」と思う作品が出そろい、日本のファンへの想いとダンサーの躍動が感じられる舞台となりました。

 オープニングを飾ったハンガリー国立バレエ団の高森美結さんと森本亮介さんの「海賊」第1幕のグランパドドゥは、オープニングにふさわしい華やかさがありながらも、奴隷として競りにかけられる際の心情が深く演じられ観客の心をわしづかみにしました。

 

 続く「ドン・キホーテ」第1幕よりキトリのバリエーションを踊ったヴィクトリアン ステイト バレエ出身の山本奈那さんは、息を飲むほどの高度なテクニックで、余裕すら感じられる安定感があり、観客をスペインのバルセロナへ導いてくれるような踊りが印象的でした。

 

そして同じ「ドン・キホーテ」の作品からはオオツカバレエアカデミー倉内七さんにより、第3幕のキトリのバリエーションも見ることができ、バレエの技術はもちろんのこと、ダンサーのスタイルの良さから醸し出される品がなんとも可憐なキトリらしさを演出して観客の目を虜にしたりと、それぞれの持ち味を生かしたキトリを一緒に堪能できるのも、ガラコンサートならではでした。

 

 同様にクラシックバレエのハイライト作品としては、ポーランド国立ポズナン歌劇場の葛西ひかるさん、ドイツ州立ハレ歌劇場の森川礼央さんによる「ジゼル」第2幕のグランパドドゥが素晴らしく、この世のものではない妖精ジゼルと生きるしかない人間であるアルブレヒトの、儚く尊い愛が表現されていました。

 

また「パキータ」のエトワールのバリエーションを披露した佐々木須弥奈さんは、英国ロイヤルバレエ団で磨かれた安定感のあるテクニックで、ソロとは思えないほど会場全体を引き込むダンサーの品・迫力・力強さを感じさせてくれました。

 その他、「アレルキナーダ」のグランパドドゥでは、チェコ・ブルノ国立歌劇場バレエ団榊原百萌奈さん、小笠原祥真さんのコミカルな演技と二人の息の合ったコンビネーションで、会場中がハッピーになる踊りが繰り広げられました。演目中の手拍子が鳴りやまず、会場が一体となった作品でした。

 

また、クラシックバレエの代表作以外の様々なジャンルの作品を見られるところもアンサンブルガラの面白いところです。「a rainy day」はダンサー自身の振付作品で、夏の雨をテーマとした作品でした。昨年魅力的な踊りを披露してくれたポーランド州立オペラノババレエの立川透子さん奥薗将文さんでしたが、昨年から更にパワーアップし、創作の奥深さの新たな一面を見ることができました。

 

 「memories」はカザフ国立オペラバレエ劇場の橋本有紗さんとピアノによる生演奏との作品でした。ピアノ伴奏はお母さまが演奏されるという親子共演作品で、迫力のあるピアノメロディとダンサーとの息の合った掛け合いが魅力的でした。

 

雰囲気がガラっと変わり、ブルガリア州立スタラザゴラ歌劇場 から参加の須賀遥香さんと石郷朝暉さんの「Amora」は、リベルタンゴの曲にのせて踊る情熱的な創作作品で、ステージ上で見つめ合う二人の息づかいが肌で感じとれるようで、濃密な香が漂ってくるような大人な作品でした。

 

 最後の「ON THEON THE NATURE OF DAYLIGHT」は第1部の締めくくりにふさわしく、ドレスデン国立歌劇場の藤本佳那子さんとアレハンドロ・マルティネスさんの貫禄あるダンサーの姿と圧巻のパフォーマンスで観客を魅了しました。最後はカーテンコールが止まないほど、感動が心にとどまり続けました。

 

 第2部 の『シンデレラ 』はプロダンサーと日本で活躍中の共演ダンサー、そして未来のバレリーナである子供たちが一つになって作りあげた作品でした。世界各国から集まったバレエダンサーで一つの幕物作品を創り上げるというのはなかなか難しい挑戦といえるでしょう。主演のシンデレラと王子はポーランド国立バレエ団のファーストソリストである影山茉以さんと北井僚太さん。幕が開き、部屋の中で無邪気にほうきと踊るシンデレラのどこかあどけなく、かわいらしいシーンで始まりました。続く1幕では、シンデレラのストーリーを引っ張っていくフェアリーゴットマザー役にザグレブ・クロアチア国立バレエ団ソリストの新崎日菜子さん。妖精を醸し出すような柔らかさの中にもキレと華やかさがある踊りでストーリーをリードします。四季の妖精もエジプト、ドイツ、ロシア、オーストラリアと世界各国様々なエリアのバレエ団からのダンサーたちで構成。それぞれのソロももちろん見ごたえありましたが、四季の妖精の四人の踊りは見事に息が合っていて、各国バレエ団の中での日本人ダンサーのレベルの高さを感じました。1幕最後は四季の精のお付き役子供たちとともにかぼちゃの馬車に乗ってシンデレラはお城へ。子供たちと可愛らしいかぼちゃの馬車に見守られ、温かみのあるシーンにて幕が下りました。

 

道化の楽し気で元気いっぱいの踊りからスタートした2幕はゴージャスな舞台美術の宮殿内での舞踏会のシーン。コミカルな演技の義姉妹はロシアとチェコのバレエ団からの出演ですが、2人のやり取りがとても面白く、目を惹いていました。日本国内で活躍中のダンサーとの共演である貴族の踊りのワルツは、多くのパ・ド・ドゥペアが行きかい、大変華やかで見ごたえがあり、ワルツの構成もとても工夫されていました。

 

可愛らしい子供たちのオレンジの精の踊りと義姉妹の駆け引きもユニークな演出で、物語に彩を与えていました。

2幕最後のシンデレラと王子のグランパ・ド・ドゥは1幕のシンデレラとは違う輝きを演じ、物語のクライマックスにふさわしい幸せなムードいっぱいの輝かしい踊りを披露してくれました。品のある踊りがまさにシンデレラを醸し出す空気感を漂わせていました。

大きな時計の登場で舞台は一気に緊張感を増し、二幕が閉じました。

そして一気に日常に戻ったシンデレラ。しかし最後は王子と結ばれ、星空の中でのグランパ・ド・ドゥには、二人のやわらかい優しさ溢れた美しいシーンでした。

 

海外で活躍している多くのダンサーを今回一気に観ることができたこのアンサンブルガラコンサートは、とても貴重な機会でした。ロビーでは、さまざまな国から集まったダンサーのパネルも飾られ、多くのバレエ団やそこで活躍する日本人を知る良い機会となりました。

 

今回の舞台のディレクターを務めた竹内大祐さんにインタビューしたところ、

「世界のプロフェッショナルダンサーの皆様と関わらせて頂いたのはこの上ない素晴らしい貴重な経験でした。また日本人たちがこんなに活躍してるのを観て嬉しくなりましたね‼バレエという芸術は常に紡がれて行くものだと考えています。彼らがきっと次世代のダンサーたちに繋いで、そしてそれが更に続いていけば良いなと感じました。言葉では書ききれない表現出来ない感動を彼らから頂き、深く感謝するとともに、今はまた一緒に是非とも舞台を作りたいという気持ちでいっぱいです。」と感動の一言を頂きました。

 

観客の皆様も 心温まる幸せな物語に感動したとともに、世界の多くのダンサーとここで出会えた喜びを感じた一晩だったと思います。また来年、より多くの世界中で活躍するダンサーにアンサンブルガラコンサートで出会えることを楽しみにしたいです。

 

アンサンブルガラコンサート 公式ページはこちら☞

 


 

<第一部 出演ダンサー>

「ドン・キホーテ」第3幕よりグランパドドゥ/橋本有紗・Rafael Urazov 

(カザフスタン国立オペラバレエ劇場)

「ジゼル」第2幕よりパドドゥ/石井杏奈・中島貴大 (Ballet de Barecelona)

「パリの炎」よりグランパドドゥ/鈴木賢陽・中川奈奈 (チェコ国立バレエ団 )

「マルコスパーダ」第2幕よりグランパドドゥ/葛西ひかる・Massimiliano Romano 

(ポーランド州立ポズナン歌劇場)

「ライモンダ」第3幕よりグランパドドゥ/瀬屑真紀・岩崎達 

(ポーランド州立ヴロツワフ歌劇場/ポーランド州立ポズナン歌劇場)

「fake moon」/佐藤友香 (ザールラント州立劇場)

「ラ・シルフィード」よりパドドゥ/加藤花歩・玉川貴博

クイーンズランドバレエ団/クロアチア国立バレエ団)

「アレルキナーダ」よりグランパドドゥ/柴垣未羽・廣瀬晃太朗

(ロシア国立サラトフ・オペラ・バレエ劇場)

「ペアー・ギュント」/藤本佳那子・Christian Bauch (ドレスデン国立歌劇場)

「ダイアナとアクティオン」よりグランパドドゥ/榊原百萌奈・小笠原祥真

(チェコ・ブルノ国立歌劇場バレエ団)

 

<『シンデレラ』CAST>

  

シンデレラ/ 影山茉以

王子/ 北井僚太

フェアリーゴッドマザー/ 新崎日菜子

道化/ 小笠原祥真

義姉/ 廣瀬 晃太朗

義妹/ 鈴木賢陽

継母/ 高橋南奈

実父/ 岡本尚之

春の精/ 小暮柚香

夏の精/ 佐藤友香

秋の精/ 柴垣未羽

冬の精/ 加藤花歩

従者/ 玉川貴博 中島貴大 松井大和 Massimiliano Romano 

オレンジの精/ 齋藤珠希 天田美月 荒木柑南

貴族/ 葛西ひかる 中川奈奈 志賀有季乃 島田久与 

庄司寧々 野久保奈央 牧恵理子 山田実希 

玉川貴博 中島貴大 松井大和 Massimiliano Romano

黒田悠介 桐谷理央 藤田英知 チョン・ソンギョン