バレエ公演レポート

NEW 2025.9.8 更新

~感動の舞台~

バレエ公演REPORT


 

バレエアンサンブルガラコンサート

2025~大阪~

2025.7.27(日)

豊中市立文化芸術センター 大ホール

 

 

   2022年夏に大阪でスタートしてから毎年恒例となっているマーティ株式会社主催の「バレエ アンサンブル ガラコンサート」が、今年は大阪と東京の2回公演になり、開催されました。「アンサンブル」とはフランス語で「共に、統一、調和」を意味する言葉。このアンサンブルガラコンサートは、プロアマ問わず様々なダンサーに多くの思いを込めてマーティ株式会社が主催しているものです。代表取締役の松崎社長は、「海外でプロとして活躍している日本人バレエダンサーは年々増えています。そのダンサーたちの踊りを日本でも披露する機会を作って日本の皆様にご覧いただき、もっと彼らを知ってもらいたいと思っています。そして日本でバレエの練習に励んでいるダンサー、未来のバレエダンサーたちと一緒に一つの舞台を作ることで、世代や経験を超えて刺激を与えあい、共演を通してより視野を広げ、技術面、精神面ともに成長する機会となってほしいと願っています。」と自身の思いを語ってくれました。

 

マーティ株式会社は全国に15箇所以上のバレエスタジオを運営、毎年数多くのコンクールやガラコンサートの舞台イベントも開催し、バレエ教育、そしてバレエ文化を日本に広める活動に取り組んでいます。今後も引き続きアンサンブルガラコンサートへの期待を膨らませていました。

 

 

 今回の大阪公演では、第1部はバレエガラコンサート/日本国内外で活躍するプロバレエダンサーの饗宴ー 、第2部は「くるみ割り人形」-雪の情景とお菓子の国ー/プロバレエダンサーと未来のプロダンサーの共演、という構成で開催されました。

 

 観客の心を打つ、パワーとスピードに満ちた踊り『パリの炎』で幕を開けた第1部。爆発的エネルギーのグラン・パ・ド・ドゥで、革命の魂を伝える踊りからはじまり、会場には早速高揚感が広がりました。

 また、誰もが楽しくなるような作品『不思議の国のアリス』からはクライマックスである、ジャックとアリスのパドドゥシーン、そしてバレエのコンサートならいくつか観て帰りたい王道のクラシック作品からは『ドン・キホーテ』や『コッペリア』が披露され、見ごたえあるグラン・パ・ド・ドゥではそれぞれ2人の呼吸の揃った動きと華麗なテクニックで、幸福な時間を感じさせてくれました。

 

 また、『春の水』や『ダイアナとアクティオン』の作品は、ダイナミックなリフトやハイレベルな回転などが多く、2人の息の合った動きと高い跳躍が舞台を躍動させ、一瞬一瞬が光に満ちた鮮烈な印象を残しました。生命力にあふれたエネルギッシュな踊りは観客から思わず拍手が湧き起こるほどでした。

 

『スパルタクス』の作品もスパルタクスと恋人フリージアの絆が美しく、2人の切ない愛と希望がドラマチックに描かれ、包み込むようなリフトからは見つめ合う視線の中に言葉を超えた深い感情が伝わり、客席の空気さえも止まったかのような、ロマンチックで美しいアダージオでした。

 

 そして、ガラコンサートの醍醐味は様々なジャンルの踊りを観ることができること!今回は、このガラコンサートのために創作されたソロ作品が、日本であまり観ることのできない振付家マルコ・ゲッケの『The lost memory』という作品でした。記憶のゆらぎや、失っていくものの中に残る感情を身体で語る作品でした。繊細な表現力が際立ち、観る者の想像力を揺さぶりました。

 

 また、モダン作品として、『ペア―・ギュント』が印象的でした。初見でも、登場人物の関係性や感情がよく伝わってきます。3人のダンサーがそれぞれ「怒り」と「葛藤」を表現。日本ではあまり観ることができない大作の一部を観劇することができ、モダンな振付だからこそ際立つ、身体と言葉を超えた衝撃が鮮明に残りました。

 

 第2部 の『くるみ割り人形-雪の情景とお菓子の国ー』は海外で活躍するプロダンサーとプロの世界を目指している未来のプロダンサーたちが創り出す舞台でした。プロダンサーたちを筆頭に金平糖の精とお菓子の国の王子の華やかなグラン・パ・ド・ドゥの場面が演じられ、豪華な演目となりました。金平糖の精には小林愛里(英国ロイヤルバレエ団)、お菓子の国の王子には中尾太亮(英国ロイヤルバレエ団)他、計12名のプロダンサーが「くるみ割り人形」に出演し、この演目をリードしました。 

  この『くるみ割り人形』の演出、構成、振付を担当したのは、香港バレエ団でプリンシパルとして活躍していた富村京子と藤野暢央。 バレエテクニックの指導や作品構成が素晴らしく、出演者はリハーサルから本番までの間で著しい成長を成し遂げました。さらに出演者を一つのチームとしてまとめ上げる力量と、完成度を高め出演者一人ひとりの心を動かす熱い指導は、まさにリードダンサーにふさわしい姿でした。

 

 そのような環境の中、一般共演ダンサーたちはプロダンサーたちと共にリハーサルを行い、プロによるバレエを間近で体感し、日に日に進化していきました。普段は別のバレエ教室で学ぶ彼らは本公演のためにオーディションにて選ばれたメンバーです。短いリハーサル期間の中、集い支え合い、そして本番の舞台上ではみんなで一丸となって力を合わせ、それぞれの役でキラキラと輝いていました。共演ダンサーは「雪の精・中国・葦笛・キャンディボンボン・花のワルツ」の5作品に出演。 同世代の仲間とともに切磋琢磨し、⼀体感を感じる作品となりました。

 

アンサンブルガラコンサート 公式ページはこちら☞


<第一部 出演ダンサー>

「パリの炎」よりグランパドドゥ/岡村美歩・森川礼央

(ヴロツワフ歌劇場バレエ   デミソリスト・ドイツ州立ハレ歌劇場/ソリスト)

「不思議の国のアリス」より/東野瑞生・三橋匠(ポーランド州立オペラノババレエ)

「ドン・キホーテ」第3幕よりグランパドドゥ/橋本有紗・Rafael Urazov

(カザフ国立オペラバレエ劇場)

「The Lost Memory」/Veronica Segovia Torres(Staatsballett Hannover)

「スパルタクス」/富村京子・藤野暢央(元香港バレエ団)

「ペアー・ギュント」/藤本佳那子・Christian Bauch(ドレスデン国立歌劇場/プリンシパル)

「コッペリア」第3幕よりグランパドドゥ/北野聖奈・脇塚優(ノーザン・バレエ)

「春の水」よりパドドゥ/顯谷伊織・Kennedy Ballard(バレエ・メンフィス)

「ダイアナとアクティオン」よりグランパドドゥ/榊原百萌奈・小笠原祥真

チェコ・ブルノ国立歌劇場バレエ団)

<『くるみ割り人形』CAST>

クララ/富村京子 くるみ割り人形/藤野暢央

金平糖の精/小林愛里 お菓子の国の王子/中尾太亮

雪の王女/東野瑞生 雪の国王/三橋匠

雪の精/共演ダンサー

お菓子の国の導きの精/榊原百萌奈・岡村美歩・顯谷伊織

スペイン/北野聖奈・脇塚優

アラビア/橋本有紗・Rafael Urazov

中国/共演ダンサー

芦笛/共演ダンサー

ロシア/小笠原祥真・森川礼央・Kennedy Ballard

キャンディーボンボン/共演ダンサー

花のワルツ/共演ダンサー